【古今東西ビジネス書ログ】人生という船旅に役立つ本

ビジネス本を読むことが好きなアラフォー子育て中のサラリーマンです。 多くの人達と同じように、日々の問題をビジネス本の中の考え方やノウハウを試行錯誤しながら取り入れることで解決したり乗り越えてきたので、役に立ったものや面白かったものを紹介していきたいと考えています。

打たれ強く生きる(著者:城山三郎)

 作家の城山三郎氏のエッセイ。1983年に日経流通新聞に掲載されていたものを再構成したもの。亡くなった父親の書棚から拝借。ちょうど父が今の自分と同じアラフォーの頃に読んでいたと思われる。赤線が引かれた個所から、父が子供には見せない葛藤と希望を抱えながら生きていたことが伝わってきて感慨深い。レズリーという歌手の「you gonna be」という曲に「母が言っていた言葉を大切にし、父が読んでいた本を読もう」というフレーズがあるが、言わんとすることがわかるような気がする。父が大事にしていた本を読むというのは間接的な対話だと思う。
 内容は、困難な状況に置かれた人のエピソードや、支えとした考え方を城山さんの感じたことを肉付けしながら紹介したもの。苦境を乗り越えた人の話には、人も気持ちを前向きにする力が宿っているように思う。非常に乱暴だが一貫しているメッセージとしては、「与えられた環境でよりよく生きる」ということ。安穏とした生活をしているブログ主のような人間が言っても何の説得力を持たないが、本書の中で出てくる左遷、事業の失敗はもとより、大病、失明、戦争などの厳しい経験をした人の言葉としてきくと、大変な重みがある。
 あとがきに、当時の読者から「読んでいて心が洗われる」とのコメントが紹介されていたが、この本を紹介する上での至言だと思う。今から35年前、日本は今よりもっとエネルギーに溢れてたが、生き方が画一的で、その価値観に合わない人や、落伍する人にとっては生きずらい世の中だったと想像する。そんな時代に多くの働く人の支えとなった本書は、今読んでも全く色褪せることはないように思います。時代が変わっても通底の大事な考え方は変わらないのではないかということを本書を読んでいて感じます。挫折を感じている人や、辛い時期にある人にはとてもお勧めです。

 

■評価 ※ブログ主にとっての役立ち度
 ・A+


■もっとも参考になった習慣、考え方
人生あわてても仕方がない。まわりはどうあろうと、自分は自分でたった一つしかない人生を大事に見つめて歩いていく


■参考になったポイント(引用)
●丸田さん(花王石鹸の元社長)はまず第一に会社以外の勉強をするようにと勧めた。宇宙物理学でも何でもいいから、目標を決めて挑戦せよ。それも基礎が大切である。基礎的な勉強から始めて勉強が面白くなるまでやめてはいけない。第二に文学や芸術に触れよ、ということ。漢詩などの古典はいざという時に心の支えになる。映画、音楽も同じ。そうしたうるおいを持たないと人生は辛いものとなる
●漫然と日を過ごしたりレジャーにうつつをぬかすのは困るが、会社のためにカリカリ働くだけが能ではない。もっと大きな人間に自分をじっくり育てなさい。それが自分のためにも会社のためにもなる。
こうしてみれば、人生はこうした悔いの連続である。とすれば、悔いるだけでなく、とにかくその中に入りこんでみて、得られる限りのものを吸収し、そこから出られる日を待つしかない。
●日々に新たに挑戦を続ける。決して満足しない。
●大人が一年間ムキになってやればたいていのことは立派な専門家になれます。
人生あわてても仕方がない。まわりはどうあろうと、自分は自分でたった一つしかない人生を大事に見つめて歩いていく
●経済学者ワルテスの言葉。「静かに行くものは健やかに行く。健やかにいくものは遠くまで行く
人生の原点が常に死であると思えば、少々の挫折など何でもない
●山田光成さん(日本信販の創業者)。息子の結婚式の直後に子会社のツアー客をのせたトルコ航空機が墜落。この時、山田さんは「災難に遇う時期には災難に遇うがよく候。死ぬる時節には死ぬるがよく候。これはこれ災難をのがるる妙法にて候」という良寛の言葉を思い出し、難にまともに取り組むことこそ、息子夫婦の引き出物になると考えた。
●成るようにしかならぬ。長い人生には幾度かそういう時がある。そういう時はなるようにしかならむと腹をくくること。ただし、同じように難しい局面だが、あえて命がけででも挑戦すべき局面がやはり人生には何度かある。いま、ここで立たなければ人生の意味はない。全身全霊をかけてぶつかろうというのである。(稲葉秀三さん)
●無私ほど強いものはない。
●大病にせよ、大失敗にせよ、人生のすべてを観察というか、好奇心の対象として眺めるゆとりを持つ限り、人は必ず再起できるものなのだ。

 

■面白かったポイント(引用)
●慈善事業から企業に至るまで、近代日本の枠組みは、ほとんど渋沢栄一の力を借りている。
野上弥生子さんは百歳まで生き、今なお現役の作家として連載の仕事を続けている。過去のことを話そうとしない。新聞をよく読んでいて、行くと次々に意見を訊かれる。
●どんな事態にも、第三の道がある。そう思えば、人生にも新しい風が吹いてくるではないか。(ルソン助左衛門。海外に脱出して新天地を生きる)
勝海舟はとにかく歩く男であった。歩くことで、馬の上や籠の中からは聞きとれない何かを掴むだけではない。有形無形のつながりがでてくる。
私は自分を文士というより文弱の徒だと思っている。だから打たれ強さの秘密を人一倍知りたいと思ってきた
膨大な読書量が人生とは何かを語りかけてくる
●自分だけの暦を持つ
●武田さんは毎朝4時に起き、一時間、リンガホンで英語を聞く。何かを聞くということは心の安定に役立つ。

 

■リンク

打たれ強く生きる (新潮文庫)

打たれ強く生きる (新潮文庫)


■構成
大きな耳
新しい企業英雄
歩け歩け
ぼちぼちが一番
配転ははじまり
自分だけの暦
晴れた日の友

 

■基本情報
 著者:城山三郎
 出版社:新潮社
 発行日:1989/5/15